皆さん、こんにちは。
第1回のインタビュー記事となります。
今回インタビューさせていただいたのは、鹿児島で同人作家として活動をされている空国慄さん(むなくに りつ)(@munakuni)です。
空国さんは2020年に五周年を迎える文芸サークル「釘と屏風」(@kugi_byoubu)という団体で小説を執筆されています。普段は近未来小説やいわゆる、ライト文芸と呼ばれる作品を書いている空国さんですが今回は、趣味や最近の出来事、鹿児島についてどのように考えているのかを聞いてみました。
※今回のインタビュアーはエヌです。
空国慄について
――本日は私たちのインタビューを快く引き受けて下さってありがとうございます。それでは、早速インタビューをはじめさせていただきます。まずは、自己紹介の方をお願いします。
空国慄(以下、空) 「釘と屏風」という同人サークルで小説を書いています、空国慄です。
――ありがとうございます。同人活動をはじめたきっかけはあったのですか。
空 今のメンバーに誘われたからですね。
――そうでしたか、ちなみにどのような小説を書かれているのですか?
空 なんだろう、例えば子供の頃に読んでいた漫画のノベライズとか、ライトノベルとかそう言った作品から影響を受けたような作品を書いていますね。
――なるほど。私も「釘と屏風」の冊子に収録されている空国さんの小説を読んだことがある(すべて)んですけど、どこか映像的な感じがしますね。ライトノベルというか、エンターテイメント小説と言いますか。先ほど漫画のノベライズと言いましたが、漫画ではなく小説(ノベル)を選んだ理由があったりするんですか。
空 漫画書きにならなかった理由は単純で、自分があんまり絵が上手くなくて。絵って、自分が想像したものを思い通りに書けないとすごいストレスで。逆に言うと、文章は書いてしまえばその通りなので。だから、小説の方が向いていると思って小説を書いていますね。

映像学校の話
空 映像科の学校にも少しだけ通っていた時期があったんですけど、その時自分はあんまりチームでの作業に向いていないと思って。大人数での人間関係や利害関係に関しての立ち回りが難しくて。小人数で済むのがいいなって。それで、漫画か小説と考えた時に絵もあんまり上手くなかったから小説を選んだというのもありますね。
――色々と考えた上で小説を選んだんですね。あと、差支えなければお聞きしたいんですけど、映像科の学校ではどのようなことをされていたんですか。
空 プロが使っているような編集ソフトの扱いについての勉強とか。映像の編集だけではなくて、音の編集もありましたね。あとはカメラの使い方。撮影……カットの撮り方、例えば「このカットを撮るためにどういったカメラ使いをしますか」といった問題とかが講師から出されたり。
――生徒が実際に課題を作って講師陣が採点していくみたいな。
空 例えば、机の上に箱を置いて「通販番組の商品紹介としてこの映像を撮るときにどういう角度で撮りますか」とか。そう言った課題が出るんです。それで採点の基準として「四角形の立方体であることが伝わるように撮れているか」とか「光の当たり具合がどうなのか」みたいなのを採点される。
――映像学校の話ってはじめて聞いたんですけど、すごいですね。空国さんは映画がかなり好きだと思うんですけど、その学校時代に自分と同じくらい映画が好きな人とかいなかったんですか。
空 自分よりもランクが上だなと思える人もいたんですけど、ほとんどの人はただなんとなく入学してきた感じだったと思いますね。同じ映像好きなはずなのにコミュニケーションが取りにくいというか、住む世界が違うなって感じでした。
――皆がみんな、映画や映像が好きって訳でもなかったんですね。
ちゃんびい(以下、B) どうしてそういう人が映像の学校に入ってくるんですかね。本当に入試が簡単だから?
空 AO入試で試験が簡単だったからというのはあると思いますね。あとは、地元のテレビ局で働きたいという人もいたと思います。学校として地元のテレビ局へ入社している人も多かったので。
――勝手なイメージですけど、映像学校と聞くと映画とかCMを撮りたいというクリエイター思考の人が多いとばかり思っていたんですけど、そういう訳ではないんですね。
空 そういう人ばかりではないですね。テレビ局とか、映像会社全体でやるような色んな仕事を学んでいくので、必ずしもクリエイター思考の人ばかりではないです。
B その学校って鹿児島の学校ですよね。例えば、鹿児島で映像会社に就こうと思ったら専門学校で学ぶというのが正規のルートなんですかね。
空 卒業した方がある程度有利かもしれないけど、大卒の方がもしかしたら有利かもしれない。現場ですぐに動けるのは専門学校の人かもしれませんが。
――空国さんは「釘と屏風」の冊子の表紙も作っていますけど、映像学校時代に学んだ技術も活きているんですかね。
空 まぁ、フォトショップの授業とかもあったので学んではいたんですけど、学校に入る前から画像の編集はしていたので、直接的に活きているかは分からないですね。
――なるほど、専門学校に入る前から画像の編集はやっていたんですね。

空国慄の趣味
映像の編集
空 さっきの話と繋がって来るんですけど……『グランド・セフト・オート』っていうゲームがあるんですね。1つの街を舞台にゲームをプレイして行くんですけど、その様子をゲームの中で録画することが出来るんです。で、更にそれをゲーム上で編集して動画を作れるという機能がある(笑)最近はそれでショートムービーを作って遊んでいます。
(実際にスマホで保管している映像をみせてもらう)

B これ凄いですね。写真を撮ってもいいですか……ああ、でもこの席からだと光が入ってしまうな(ファミレスの窓側の席)
空 写真は撮っても大丈夫ですよ。あと、携帯のカメラは左上についているから、向きを逆にしたら光が入りにくいですよ。
B あ、本当だ。
――うわっ、すごい。流石ですね(笑)
空 すごい自由度が高いんですよ。ゲーム内で録画だけして、カメラワークだけをいじったりも出来るんです。
――かなりクオリティ高いと思うんですけど、youtubeへのアップを考えたりはしないんですか?
空 アップしても誰も見ないだろうし、完全な自己満足ですね。
――見ごたえあると思いますけどね(笑) このゲームは私も昔やってたんですけど、かなりリアになりましたね。キャラクターとかも自分で作れるんですか?
空 『GTAオンライン』というのがあって、それだとキャラを自分で作れるんです。趣味というか、これが、最近遊びでやってるやつですね。
――簡単に仰っていますけど、多分かなり難しいですよね。カメラワークとかもちゃんと考えないと映像として成り立たない。
空 カメラワークとかある程度どうにでもなりますよ。誰がどこにいるのかという位置関係と移動のことだけ考えておけば簡単に出来ます。
――凄いですね。例えば、ぼくたちが適当に撮った映像が複数あったとして、そこを編集しさえすれば、映像作品として制作出来るってことですよね。
空 的確な素材があればね(笑)
少年漫画
空 あとはゲームとか、漫画にはまっていますね。最近は、生まれてはじめてくらいにジャンプ漫画にはまっています。最近だと『チェンソーマン』とか。
――今おいくつでしたっけ?
空 26歳です。
――ぼくと同じですね。26歳にして初めて少年ジャンプにはまると言うのも珍しい気がします。
空 昔も、例えば『エムゼロ』とかにはまっていましたけどね。
――なぜ『エムゼロ』だったんですか?
空 なんでだろう、ジャンプっぽくないからかな。ジャンプの、友情・勝利・努力って感じもしないし。そういったジャンプの図式があまり得意じゃなくて。例えばなんですけど、『ドラゴンボール』にあまりハマれなくて。何故かというと、ボール7つ集めれば人を生き返らせることの出来る世界での人の生き死にってどうでもいいじゃないですか。そういうのに乗れないってのはある。あと、話の引き延ばしが多いのも苦手ですし。
――その点、『エムゼロ』はパっと終わりますよね。
空 そうですね。あと、最近は『週刊少年サンデー』も読んでいます。『よふかしのうた』とか。どんな話かと言うと、吸血鬼の女のと普通の男の子がいて。男の子が夜更かしをしていると、吸血鬼の女の子に出会うんですね。 で、その男の子も吸血鬼に憧れて吸血鬼になろうとする、という。
――やっぱりジャンプの図式とは違うんですか?
空 基本的にはラブコメディですし、1話完結の話が多いですからね。
B 週刊で読んでいるのは『サンデー』だけですか。例えば、『ヤングマガジン』とか『モーニング』とかはどうでしょう。
空 雑誌で読んでいるのは『サンデー』だけですね。新連載がはじまったら手に取って読んでみたりはしますけど、途中から読んでみたりはしないですね。
――話はちょっと戻りますけど『チェンソーマン』の作者の方も映画が好きなんじゃないですか。インタビューか何かで読んだ気がします。
空 コマ割りとか見ていても、明らかにそうですね。レイアウトとかも絵コンテってぽいですし。あと、『チェンソーマン』に関しては地の文が少ないのも好きです。『鬼滅の刃』にあまりはまれなかったのも説明文が多かったからで、無駄な説明文は省いている漫画の方が好きです。
――なるほど、と言うことは『チェンソーマン』はほとんど映像として観ている感じですか?
空 そうですね、ほとんど映像感覚で観ています。
――他に何か読んでみようとか、連載が終わったら読んでみようと言う漫画はありますか。
空 どうだろう、もう連載は終わっている昔の漫画ですけど『金色のガッシュベル』は読んでみたいですね。一応、新装版の1巻だけは買っているんですけど、まだ読んでいない。自分が少年代に流行っていた漫画は改めて読んでみたいですね。自分の気持ちはずっとゼロ年代にあるので(笑)
B デスノートとかも今読めばぜんぜん違いますよね。
空 絶対違うと思いますね。
鹿児島について
――では、これまでとは違った質問になるんですけど、今の鹿児島についてどう思いますか?
空 正直に言うとよく思う気持ちと悪く思う気持ちが半々です。どちらかと言うと、良くないかもなっていう気持ちの方が強いですね。6対3くらいで。
――なるほど。では最初に、良いと思っている面からお聞きしても良いですか。
空 そうですね、海も山もあって食に関しては豊富な土地だと思います。冬場は北の方よりも過ごしやすいだろうし。あとは桜島があって、灰が振るっていうやっかいさもあるけど、恩恵もあるじゃないですか。温泉が豊富だったり、灰を特性として桜島こみかんが生産されていたり。食に関してはすごく恵まれた土地だと思いますね。食は人間の基本でもありますから。
――ちなみに、空国さんから見て、鹿児島に来たらこれを食べたらいいというものはありますか。
空 かるかんとかはるこまとか、お菓子系ですかね。
――薩摩蒸気屋のお菓子は美味しいですよね。じゃあ、逆に良くないと思っているところは。
空 地方の人間として観光を盛り上げたいという気持ちは分かるけど「西郷隆盛に頼るのは止めた方がいい」「とにかく全体として過去の偉人に頼るのは止めて欲しいなぁ」とは思っています。あとは方言の使い方が気になりますね。
「ゆくさおじゃったもした」とか鹿児島弁をキャッチ―なものとして使うのは止めた方がいいんじゃないかなって。鹿児島弁って、例えば沖縄の言葉みたいにエクストリームさもないし博多弁のようなキャッチ―さもないじゃないですか実際には。それでいて「方言を使ってキャッチ―なアピールをしよう!」みたい姿勢が、「それって本当に観光で来る人たちのことを考えているのかな」って思うんです。「『ゆくさおじゃったもした』はもう禁止にしません?」ってすごく思っています。
B なるほど、今、目からうろこが落ちたような、なるほどと思います。
――鹿児島の方言って実際何を言っているのか分からない部分がありますからね。
空 正直、「他県に対して鹿児島弁をPRしていくのは難しい」と思っています。博多弁は可愛い方言としての地位を確立しているけど、ぶっちゃけ九州全体で方言が似通っているところもあるし。鹿児島って駅の改札を出ると方言が書かれていたりするじゃないですか。「ダサいからやめようよ」と思うんですね。鹿児島県民全体から、「自己完結に陥っている」というのは感じます。
――県民性についてはどう思いますか。
空 正直あんまり好きではないです。なんというか、例えば「今から盆踊りをしましょう」って号令をかけられた時に自分から前に行く人が少ないような印象を受けるんです。当事者意識を持っている人が少ないのかなと思ったりもしていて。
――引っ込み思案が多いというか、主体性があんまりないというか。
空 主体性はない気がしますよね。
――ぼく個人としても、鹿児島の人はコミュニケーションの苦手な方が多いと思いますね。
B 空国さんの個人的な意見で良いんですけど、例えば、沖縄とか福岡、大阪や京都の人って地元に誇りを持っていると思うんですよね。自分たちの県民性にしてもそうで。そう考えた時に、鹿児島の人って自分たちの県民性に誇りを持っていると思いますか。
空 誇りの持ち方が違うというか。誇りを持つ角度が少しずれているんじゃないかなと。例えば、大河ドラマで薩摩藩の人が出て来て、鹿児島弁の再現度が低いと「下手だと」言ってみたりとか、まぁ、それはどこも同じだと思うんですけど、上手く行ったときに変な方向の誇りが出ている気がするんです。「鹿児島弁は他の県の人には難しかったかな」みたいなことを言う人が多い気がするんですよ。どうしても、お高く留まっている印象を持ってしまうというか。そういうところがあんまり好きじゃないですね。
B 例えば、「ゆくさおじゃったもした」みたいな方言をPRとして使用している人。そういうのを作っている人って、色々と考えた結果方言を使用しているのか。他に何も方法が分からなくて方言に依存するような形に陥っているのか、それともそのどちらでもないのか。個人的に分からないところがあって。その点、空国さんはどう思われますか。
空 鹿児島で町起こしをしたいと考えている人は、例えば鹿児島ー福岡の新幹線でのライフラインが出来た時、「どうやって自分たちの住んでいる鹿児島という町を伝えたら良いのか」と考えると思うんですね。
当然、住んでいる身としては都市化したいという気持ちもあると思うんです。その反面、「熊本、福岡には適わないだろう」とい見積もしているんじゃないかなと思っていて。
都市としての打ち出し方をしたいけどそれが鹿児島という地だと出来ないから、既にあるものを打ち出して行こうと言う、消極的なPR法なのではないかなと。その結果方言に依存してしまう。
――なるほど、確かに市や県単位で行われているPRを見るとそう言った印象を受けますね。じゃあ、例えば、個人や地域おこし協力隊のような方のされている活動についてはどのように考えますか。
空 頑張っている人は本当に頑張っていると思いますし、その人たちの活動が良くなればいいなとは本当に思っています。ただ、もっと節操なくやってもいいんじゃないかなとは傍目に見て感じていて。既にあるものにしがみついている感じはありますね。
――最初は創作の話がメインになるだろうと思っていたんですけど、鹿児島についてもめちゃくちゃ考えているんですね。びっくりしました。
空 別に鹿児島について真面目に考えているという訳ではないんですよね(笑)
一番嫌いなテレビ番組に、「日本に住んでいる外国人に日本の良いところを聞いていく」というのがあって「それ日本人として恥ずかしいから止めて欲しい」って思っていて。それと同じですね。「鹿児島県民として恥ずかしいから止めて欲しい」なと思うことが多いんですね。
(後半へ続く)
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