さうれぽとしては、第2回のインタビュー記事となります。
今回は、古本屋・ブックスパーチの店主、諏訪田さん。

ブックスパーチは、鹿児島市・泉町のトマルビル1階にあるお店です。

諏訪田さんは、どのような経緯で、どのような思いで、古本屋をされているのでしょうか。また、諏訪田さんは日々どのようなことを考えて過ごしているのでしょうか。
昨年末にお話をお聞きしたのですが、公開するのがこの時期になってしまいました。ごめんなさい……
今回のインタビュアーはちゃんびいです。ぜひご覧ください。
古本屋・ブックスパーチについて
ーー諏訪田さんは今、ブックスパーチという古本屋さんをされています。今が、何年目ですか。
諏訪田さん(以下、スワダ)今がオープンして2年と3ヶ月になります。
ーートマルビルのオープンと同時ですね。
スワダ そうですね。トマルビルという建物がだいぶ老朽化していて、5年後には解体する予定で始まりました。そのあいだ何もテナントが入らないと人通りが寂しくなってしまう、とビルの持ち主が考えて。5年限定で何かお店を入れよう、というプロジェクトを進めていて、その時たまたま、1階で古本屋をやらないかというお話をいただきました。トマルビルが2年前の9月にオープンで、それに合わせてうちも店を始めました。
ーートマルビルは、今のかたちになる前は……?
スワダ その前は、「kotone」という洋服屋さんが入っていました。そこは移転して、マルヤの裏の筋に移りました。ここがオープンして1年くらいは、「kotoneさんどこに行ったの?」と言われるくらい、人気のお店だったみたいです。青のドアとか青の枠は、そのときのままなんですよ。いい部分だと思うので、手をつけずに使っています。
エヌ(さうれぽメンバー。以下、エヌ)いつのまにか本屋になってる(笑)
スワダ そう、よくわからない笑
エヌ ワンフロアが服屋だったんですか?
スワダ そう、でもここに壁があって。始まる前に入居者で壊したんです。風通しをよくするために。
ーーじゃあ、ここの柱は、のこぎりで切っちゃったら危ないんですかね?
スワダ いや、大丈夫だと思います。
ーートマルビルの1階は今、ブックスパーチさんがあり、隣がSuiさん。
スワダ あとは、そこにダルブッカカフェがある。日置にもあるんだけど、こっちにも支店があって。中東のダルブッカを演奏したり、教えたり、ときどきカフェもする。不定期だけど。そんな感じですね。
ーー隣(入口から入って左手)は?
スワダ 今のところは空き状態。なので今年の9月、残り3周年祭をしました。この隣のスペースで、ミニバザー的なイベントを。
エヌ このお店の形態で良かったところはありますか?
スワダ 古本屋は入りづらいこともあると思うんだけど、これなら隣にカフェもあるし、そこから買取の話にもつながったことがあったし。思いもよらない出会いがあるのがいいなと思いますね。オーナーも、本に触れられる環境があるのは大事にしたかったみたいで、僕もそこはまっとうしたいと思います。
ーー諏訪田さんとしては、ここでできるのは残り3年ですよね。
スワダ そうですね、折り返し地点というか。あっという間だなあと思いますね。今年はコロナもあったし。本当にここまでも、ひと月ひと月必死で。やっているうちに時間が過ぎて、やばいなと思いますね。
ーー今の諏訪田さんのスケジュールはどんな感じですか?
スワダ 定休日が水曜日と木曜日で、それ以外は12時から18時で開けています。水曜日は、アルバイトしている新刊書店に入っています。木曜日は完全オフ。でも、昼間は出張買取とか入ったり入らなかったり、ですね。買取もお客様の都合に合わせるので、木曜以外が良ければ、お店を閉めて出たり。やはりモノありきなので、買取を優先にはしないといけないですね。
エヌ 買取はどこ経由が多いんですか? 店なのか、ウェブサイトなのか。
スワダ 割と持ち込みが多いですね。少数ごとに。新型コロナ以降は特に持ち込みですかね。接触をコントロールできるからかな? と思います。

古本屋を始めるきっかけ
ーー諏訪田さんが古本屋さんを始めたきっかけはなんですか?
スワダ アルバイトしている新刊書店の店長が、「つばめ文庫」という古本屋が面白いと教えてくれたんです。
それまでは古本屋って全然行ったことがなかったんですよ。ブックオフ以外の個人の古書店はね。つばめ文庫の話を聞いて面白そうだなと思って、ブログを先に読んだんですよ。そしたら東京までヒッチハイクに行ったと書いてあって興味がわいたんです。面白い、と。

武岡のつばめ文庫さんに休みの日に行きました。最初は店のドアを開けるのも緊張したけど、やっぱり店主さんが気さくな良い方で。大型書店って、まあ、気になる本はあるじゃないですか。でも逆に自分の興味のある範囲でしか本に触れないので、自分の中でマンネリ化している感じがあったんです。
古本屋は小さい空間だけど、いろんなものが詰まっているんですね。古本なので、誰かが買ったものが店主さんのチョイスで並べられている。それを何周か見て回って、触ったりするのが面白いなと思いました。それから興味が出て、つばめさんに通っているうちに、自分でもできたらいいなという気持ちも湧いてきて。それがきっかけになりました。

それまでは他人と本の話をする経験がなかったけど、そういう場も面白いな、自分で読書会をやってみたいな、と思うようになりました。それをつばめさんに相談したら、店の一角を使っていいと言ってくれて。それを始めて1年後くらいかな、読書会にも名前をつけようと思ったんです。「気軽に集まって話ができるといいなあ」というコンセプトで決まったのが、ブックスパーチ。止まり木。だから最初は読書会なんです。古本屋もやりたいと思っていたところ、話をいただいたので、まずは店舗の下見をしようと。
ーーはい。
スワダ そして、来たら、入口に鳥のとまったオブジェがあって、これは「やれ」ということだなと思いまして(笑)見切り発車だけど、やることになりました。
ーー初めてつばめ文庫に行ったのはいつですか?
スワダ 24歳くらいだと思います。26歳くらいで読書会を始めて、28歳でここを始めて。2年ごとに段階を踏んでますね。
ーー始めるにあたって資金は用意したんですか?
スワダ いや、全然なかった。でも、つばめさんとかリゼットさんから本を譲ってもらって。あとは知り合いとか。鹿児島で業者向けの市があって、そのときたくさん落札しました。あと、当時天文館にあった、文学サロン・月の舟が移転される時期だったんですよ。その時、本棚も譲ってもらいました。いろいろ重なって、助けてもらったことが多いですね。なんとか。恩返ししたい気持ちがありますね。
ーーということは、こちらの固定費は?
スワダ 家賃くらいかなあ。店をやるにあたって必要なものとして、古物商許可証。それがなぜ必要かというと、盗まれたものが売られていたときのためですね。それが少しお金がかかって。あとは本棚とか自分で作ったり。手探りです。
ーーでも、商売じゃないですか。それを一人でされている。勇気いりませんか? すごく間抜けな質問ですけど。
スワダ いや、勇気ではなくて、ばかだからですよ(笑)やりたい気持ちの方が強かった。
エヌ 僕だったら収益とか粗利とか考えると思うんですよ。そういうの無視で、やりたいからやったんですか?
スワダ 誘われた時も、店らしくしなくていいって言われてて。海外の古本屋みたいに、地面に置いててもいいと。そんなわけないんですけど。
ーー諏訪田さんって、やりたいことをやって、あとからいろいろついてくる感じですよね。
スワダ だから、周りの人に助けられてる。運がいい。それが大きいですね。あんまり自信はない感じです。
ーー物事は悪いほうに予測しますかあ? それともいいほうに?
スワダ 悪い方に考えることが多いかな。今月は売り上げが悪いとなると、もっと悪くなったらどうしようと思うけど、結局わからないから、手探りでやってはいますね。本に興味のある人が多いわけではないので、人目につかないと意味がないから、外側のディスプレイを変えようとか、どうすれば上がるかは考えています。

エヌ 一人って、いつでもやめられるじゃないですか。続けられるそのモチベーションはなんですか。
スワダ 下心かな。言い方悪いですけど、古本屋でいることが、いちばん本を安くで集めやすいんです。普通の1割から3割で仕入れられる。自分が欲しいものも、レアなものも、古本屋でいる限りは手に入れられるチャンスが大きいので、それは逃したくないですね。
僕は人類学が好きですけど、買取の中でもめずらしい人類学系の本が、それこそ、明治・大正くらいに調査しに行ったやつとかあって。そのあとネットで販売したら、県外の博物館が資料として買い取ってくれて。そういう経験があったので、またそれをやりたい、と思うのはモチベーションになってますね。それが古本屋の仕事でもあるので。必要な人がいて、そこに届けるのはやっていきたいですね。
エヌ 会社員なら、うまくいかない時って酒飲んだりして仕事するんですけど、一人できつい時ってどうテンション上げていくんですか。
スワダ そこは同業者じゃないと同じ痛みがわからないとは思いますね。先輩とかに話すのがいちばん心強いです。例えばリゼットさんに「買取がうまくいかない」って相談すると、「待て、耐えろ、絶対いいのがくる」って言ってもらえて。それしかないんだなと思います。励みになりますね。
あとは常連さんが来てくれること。励まされます。あと、やっぱり本が好きって人が来るんですよ。地方においてはそういう場もないので、続けられる限りは続けたいですね。
スワダさんという人について
ーー諏訪田さんのパーソナリティというか、細かい質問をさせてもらっていいですか。ひとつめは、好きなテレビ番組。何かありますか?
スワダ あんまりテレビを見ないんですけど、最近はNHKの「金曜日のソロたちへ」。一人暮らししている人たちがどんな過ごし方をしているか、映像を、コメントしながら見ていく。人の生活を見られて、全然知らない価値観があって、面白いですね。
この前、ハンドモデルの人が出てて。化粧品とかの。帰ってきてから6回くらいケアしていて。料理も怪我したらいけないからしない。ずっと手袋。ぜんぜん違う生活していて面白かったですね。毎回録画してみてます。

ーーYouTubeは見ますか?
スワダ 最近見ているのは、哲学の劇場。山本貴光さんと吉川宏満さんの二人でやっていますね。最近読んだ人文書を紹介したりとか。Podcastとかもやってて、新刊の情報を仕入れるのにも重宝しています。
ーー最近オススメの漫画はありますか?
スワダ 「望郷太郎」かな。モーニングでやってます。作者が好きです。へうげものを描いてた人なんですけど。氷河期でコールドスリープに入ったけど、自分だけ生きて、妻と息子は死んでいて、今の日本はどうなっているんだろう、と思った主人公がロシアから帰ろうとする話です。そしたら世界は縄文時代っぽくて、通貨らしきものもあって、主人公は会社をやっていたからお金のことはよくわかる、みたいな。
ーー諏訪田さんの好きそうな感じですね。僕も一回やってみたいんですよ。街を歩いている人に、すみません、今西暦何年ですか?って。
スワダ まあ、難しそうだよね(笑)
ーー鹿児島で好きな場所、お気に入りの場所がありますか?
スワダ 店なら、ラーメンが好きなので、ひとつはふくまんってところ。ひとつはかどの家。どっちも歩いて5分以内にあるんですよ。
ーー行ったことある? ラーメン博士のエヌくん。
エヌ かどの家、諏訪田さん、いっしょに行きましたよね。あそこ美味しかったです。
スワダ 夜は居酒屋で、飲み放題コースで締めにラーメンが出てきます。味噌がメインで。居酒屋メニューも美味しいですよ。

ーー鹿児島で気になってる人はいますか。会ってみたいな、とか。
スワダ 鹿児島ねえ……。ああ、伊佐でダンスやってる人がいるらしいです。即興の。テレビで取り上げられていて、直に見てみたいなと思っています。

ーー好きな色はなんですか?
スワダ 青ですね。ブックスパーチも濃い青が基調なので、ちょうど良かったです。
ーー好きな食べ物はなんですか?
スワダ 麺類です。ラーメン。
エヌ ラーメンの次はなんですか?
スワダ そうめんですね。前はそんなでもなかったけど。
ーー僕も麺が好きです。
スワダ 食べると落ち着くんだよね。
エヌ ちなみに私も麺が好きです。
ーー麺いいよね。
エヌ 深夜の三次会でする話じゃないですか(笑)
ーー好きな動物は?
スワダ 猫、飼ってるので、猫は好きですね。飼い始めて9年くらい。見てて飽きないです。その前は犬を飼ってたんだけど、犬は社会的というか、家族間の関係をみて接してくるんですよ。猫は一対一で、嫌なことしたら嫌なことを返してくる。
ーー朝、体にのってきますか?
スワダ うちはそれはしないけど、足にまとわりついてきます。
ぽつぽつと、しかし確かな言葉でお話される諏訪田さん。
後編では、鹿児島について聞いていきます。
(後編に続く)
基本情報
*古本屋ブックスパーチ
〒892-0822 鹿児島県鹿児島市泉町1−8 トマルビル102
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