さうれぽの県民インタビュー、第2回は、古本屋・ブックスパーチの店主である諏訪田さん。

前編では、古本屋を始めたきっかけ、諏訪田さんのパーソナリティをお聞きしました。
話は鹿児島の話題に移ります。諏訪田さんの、鹿児島に対する思いとは?
インタビュアーはちゃんびいです。どうぞご覧ください。
鹿児島についてどう思っているのか?
ーー私たちは、さうれぽを、鹿児島のリアルを伝えるメディアとして運営しています。いい部分も悪い部分も含めて、みんなが鹿児島についてどう思っているのか、何も思っていないのか、伝えていきたいと思っています。諏訪田さんは、鹿児島について何か思っていることがありますか?
諏訪田さん(以下・スワダ) うーん。難しいけど……ただ、率直に言って、そんなにいいとは思わないですね。いいものを壊しちゃう文化があるのは感じています。
2年前にここを始めるとき、いま大きなビルがあるところの、旧鹿児島銀行の建物が、近代建築ですごく面白い建物だったんですけど、壊しちゃったんですよ。その建築のオブジェクトを保管したいという話があったみたいですが、「お金を全部出す」という申し出も、あちら側は蹴ったんですよ。その流れを見ていて、いいもの、文化的なものを大事に思わないんだなと思って、恨んでいるというか。

もうひとつは、直取引している営業の方がうちに来たことがあって、その時に鹿児島の印象を聞いたんですよ。そしたら「山形屋の近代建築がいいですね」と。でも今、また屋根を作っているじゃないですか。景観として邪魔じゃないかなと思ったり。
一方で、職業の話になりますけど、リゼットさんとか、ずっと頑張っている古本屋さんみたいに、いいものを残そうとされている方もいますし、僕が師匠としているつばめさんもいますし、その流れで僕も始めたいと思ったので。いいことをされている方はいるなと思います。
ーーいいものを残したい、という話にしても、なんで断ると思いますか?
スワダ うーん。だから理解できないんですよ。だってデメリットはないじゃないですか。本当にわからないですね。あえて想像するなら、壊したい気持ちが強いんじゃないかって。その気持ちそのものが文化としてあるのかな、と。もしかしたらですけどね。
ーーいま、天文館のビルにいろんなテナントが入ると思うけど、タカプラのあった交差点に新しく入ったのって、ジャンカラじゃないですか。スターバックスも新しく作りましたよね。
スワダ 壊してなに作るかって言ったら、結局そうなんですよね。
ーーマクドナルドをでかくしたり。それはどこにでもあるんですよ。
スワダ そう、たとえば熊本って、鹿児島みたいなアーケードをちょっと抜けると、古本屋の並んでいる通りがある。で、アーケード街の中にも新刊書店があったりして、歩いて回れる文化があるな、と思います。鹿児島はそういう連なりがない。文化的なところを意識して街を作っていない気がしますね。
エヌ(さうれぽメンバー。以下、エヌ)たしかに、熊本と比べて、鹿児島のアーケードはチェーンばっかりですね
スワダ 熊本は小さいお店がたくさんあって、歩いていて楽しいですよね。鹿児島との大きな差だと思います。
ーー土地とか建物の限られた空間に、資本が入っている気がします。
スワダ あるものをわざわざ増やす必要はないですよね。
ーー逆に、そこにあればみんな行くのかなあと思ったり。
エヌ 鹿児島をどうしたいかってことですよね。どう作りたいのか。何もないから資本が入ってくるんでしょうか。諏訪田さんは、鹿児島は天文館をどうしたいんだと思いますか?
スワダ うーん。やっぱり、文化的なものはあんまり重きを置いていないと思いますね。一方で歴史はすごく言うじゃないですか。そういうブランドの方に持っていきたいのかなと思います。文化的なものこそ大事にしたいなと思いますけどね。
ーー僕たちさうれぽは、よくガストで打ち合わせするんですけど。ガストで打ち合わせすることを、自分たちへの戒めと考えているんですよ。「周囲にチェーンばっかり」と言う一方で、「あったら使うよね」ということで。生活の中には入ってきてるんですよね。
スワダ それが普通だからなあ。
エヌ 寂しいものがありますよね。
スワダ 身近、とまではいかなくても、こっちがもっと頑張らなくちゃいけないなと思います。最近うちに来てくれた人が、「ここに古本屋さんがあったんだ」と言ってくれたり。そういうのをやっていくしかない、って感じですね。継続です。気を抜いた時にチャンス逃した、とかある気がするし。週2日いないときに、買取の話が来てたんじゃないかとか。買取の持ち込みに来るお客さんも、「リゼットさんがいなかったからこっちに来た」とかあるんで。
もし別の道を歩んでいたとしたら?
ーーブックスパーチについて、たとえば諏訪田さんが県外にいらっしゃったら、同じことをしていたと思いますか。
スワダ いや、していない。つばめさんに行ったのがきっかけだし、他のところにいたら、それがあったかどうか。本は好きだと思うけど、違う人生になっていたんじゃないかな。
ーーお店はしていたでしょうか?
スワダ していないんじゃないかな。他のジャンルでやりたいお店って、思いつかないですね。たまたま縁があって、やっていることなので、自分で店をして、とはなっていないかと。かといって会社員になっていたか?というと疑問はありますね。

鹿児島については、価値観が違うと思うことはたくさんありますけど、気が合う人もいるし、同志だな、と思う人もいるから、とりあえずここでやろうかなと思ってます。特別鹿児島が好きとか嫌いというわけではないと思いますし、その土地で合う合わないは、住んでいればあると思います。
エヌ 一貫して本が好きなんですよね。
スワダ もともと本が好きというわけではなくて、中学生くらいまではそんなに、ですね。高校生くらいから漫画が好きで、自転車で市内のブックオフを回るみたいな。ネットで一話分無料立ち読みして、気になった作品の続きをブックオフで立ち読みして、気になったら買う感じ。「寄生獣」とか「MONSTER」とか。絵が好きで。そこから「深いもの」が面白いと思うようになって。それが文学とか哲学とかに興味として繋がって、そこから徐々に本が好きになって。
ーーきっかけとなる漫画はなんでしょうか?
寄生獣、MONSTER、このふたつかな。衝撃だった。人間って深い、って思えるようになって、そこから本を読み始めるようになって。
ーー漫画以外に、読んでいた本はありますか?
大学生の頃、批評家の安藤礼二さんの授業を取っていて。そのとき、授業のゲストで来ていたのが、作家の村田沙耶香さんでした。「授乳」を読んでおおっと思って。ほかにも朝吹真理子さんも読んで。「きことわ」出したばっかりでしたね。阿部和重さんも来ました。その関係で本を読んだりして、面白いなと思いましたね。大学自体も、面白い先生が多かったです。
諏訪田さんの将来の目標は何ですか?
スワダ そうですね……いちばんは「店を続ける」が間違いなくあります。
だいぶ前なんですけど、昔この近くでやってた古本屋があったんです。センバ書房。店主さんと関わりはないんだけど、本に書店ラベルをつけてるんですよ。で、買取があるとき、たまにそのラベルの付いたものを買い取ったりして。それがいい古書なんですよ。「昔通ってた」とかの声も聞いて。そんなふうに、たまに思い出してもらえて、きちんと古書も売っている店になりたいですね。
ーートマルビルが取り壊されても?
スワダ 場所は変わっても、古本屋は続けたいと思っています。
ーー継続ですよね。
スワダ 継続ですね。止まったら死ぬし。
エヌとちゃんびいの人生相談コーナー
ーーここから、私たちのちょっとした相談を聞いていただきたいなと思います。諏訪田さんならなんて言うんだろう、と思ってることがありまして。それでは、エヌから。
エヌ いま付き合って1年半年くらいの彼女がいるんですけど、いつか結婚したいと思っていて。でも、小説家としてデビューしたいという夢もあるんです。でもそれは家庭があれば難しいのかな、と。諏訪田さんって、やりたいことをやっているじゃないですか。夢にはどう折り合いをつけたらいいのでしょうか。
スワダ まあ、話を聞いて、僕は今、独り身だからやれているのかな、と思いました。ちなみに彼女は、夢についてなんと言っているんですか?
エヌ 「へえー」って感じです。
スワダ その「へえー」って、小説家にはなれないって思ってるんですかね。
エヌ ここ5年くらいで、とは思ってないですね。
スワダ なったらなったで、口出ししないんじゃないですか。それとも、エヌさんは、こっちが生活費は稼ぐ、みたいな感じなんですか。
エヌ いや、僕と同等くらいには稼いでいらっしゃるので。僕が仕事をやめて夢を追ってもいいのに、なんでしないかというと、プライドがあるからなんですね。そのプライドを折れない自分がいる。
スワダ じゃあ自分で期限を決めた方が楽なのかもしれないですね。この期間にこれだけ頑張って無理ならデビューは考えよう、とか、そう決めておくのがいいのかもしれないですね。
ーーじゃあ、僕からもいいですか。諏訪田さんって、人もそうですけど、人の行為に興味があるのかなと思ってるんですよ。人の営みというか。そこに僕は勝手に近いところを感じていて。ただ一方で、それはコンプレックスでもあるんです。僕は、あんまり人間そのものに興味がないんですよね。優しいってよく言われるんですけど、興味がないから怒らないだけで、でも怒りたいんですよ。怒らないことで貧乏くじ引いてきたと思っていて。諏訪田さんって、たぶん、怒らないですよね。怒るにはどうしたらいいですか。あと、人に興味を持つにはどうしたらいいですか。
スワダ 怒るって、たとえば?
ーー女性と別れても、相手が悪かったらそのとき怒ればいいのに、なんかスルーしていて、あとで怒りが湧いてきて。もやもやする。諏訪田さん、僕、どうしたらいいですか。
スワダ 僕の場合は、ちょっと諦めがあるのかなと思うんだよね。怒ってもどうにもならない、みたいな。でも、ちゃんびいくんは怒りたいんだよね?
ーーちゃんと言うことを言える人になりたいです。
スワダ 微妙に違うと思うのは、ちゃんと伝えたいことがあるのと怒るのは、一致しているわけではないってこと。だから堪えちゃうんじゃないかな。あとで考えて、怒るのとは別のアクションを起こせたらいいし、ちゃんびいさんはそっちをやりたいんじゃないかと想像するんだけど。でも、普段怒ってないなら、ここぞという時に怒るのもいいのかもね。
ーーでも、怒るの難しくないですか。僕、変な怒り方しちゃうんですよ、普段怒ってないから。ネチネチしたすっごい嫌な怒り方になって。
スワダ 悲しさをアピールするのはどう? 「俺は悲しいよ」みたいな怒り方とか。怒りだけなら後から失敗するかもしれないけど、「俺は悲しいよ、〇〇だから」と気持ちをずらして伝えたほうがやりやすいんじゃないかな。
ーーすごい。
エヌ すごいですねそれ。
スワダ そう、そしたら自分の気持ちの話になるから。さっきのネチネチよりはいいんじゃない。だってネチネチしたいわけじゃないでしょ。
ーーありがとうございます!すごいなあ。
エヌ 全然軽い相談じゃなかったですね。根っこの相談でしたね(笑)
スワダさんから最後にひとこと
ーー今日はお時間をいただきありがとうございました。諏訪田さんから、最後に何か伝えたいことがありますか?
スワダ そうですね、水曜日と木曜日以外は、12時から18時まで、すみっこの方にいますので、用事があるときは気軽に声をかけてもらえたら。よろしくお願いします。
ーーありがとうございました。

基本情報
*古本屋ブックスパーチ
〒892-0822 鹿児島県鹿児島市泉町1−8 トマルビル102
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