【感想】Miyaoka Job 『Beer wo Nomihoshitai』

エッセイ

どうにかなりそう。

ああ…

ビールを飲み干したい!!

Miyaoka Job『Beer wo Nomihoshitai』株式会社オンデマンドスクエア.2021.5
Beer wo Nomihoshitai - ミヤオカジョブ - BOOTH
主人公は女の子とデートをするが、会話はまったく盛り上がらない。申し訳ないな。そんな気持ちを抱えたまま2人は解散してしまう。しかしその後、予想もしなかったある出来事が起きてしまい...。 というお話。 鹿児島市が舞台の自主制作コミックa.k.a ZINEです。 よろしくお願いいたします。 A5/40page ※6/23 ...

著者紹介

著者:Miyaoka Job

Twitter:@sugar_goodday

はじめに

ビールを飲み干してぇ、と思いながら毎日生きているし飲み干している。焦れば焦るほど、イライラすればするほどにビールが飲みたい。どうしようもない時ほど飲まなきゃやってられない。一滴の酒が全ての悩みをなし崩しにさせる。

周知の事実であるが、そういった思いでビールを飲んだところでどうにもならない。問題を先送りにさせ蓄積させるばかりである。その点、今回ご紹介させていただく漫画の主人公はビールを飲み干さなかった(そういうチャンスもなかったろうが)点に成長の兆しが見えるというものだろう。私だったら飲み干してすべてを台無しにさせていたかもしれない。

ところで私はビールが大好きである。好きな銘柄はサッポロ黒ラベル。

生まれてからの5年間を北海道の帯広市で過ごした私にとってビールは馬や雪くらい身近な存在なのだ。1999年にはアインブライトを見たらしいが、全く覚えがない。覚えがない馬や隔年でさえ降らない雪よりも徒歩2分のコンビニで買えるサッポロ黒ラベルである。

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なにはともあれ、道産子の私はビールが大好き!

という訳で、今回はMiyaoka Job『Beer wo Nomihoshitai』の感想を私の経験とともに綴っていきます。

ツイッターでブックスパーチさんが紹介していたので気になって買ってみました。読んでみると面白く、漫画好きの私は鹿児島のメディアらしく感想を書いてみようと思ったのでした。はい。

※以下、主人公の男の子=主人公、主人公が飲みに誘う女の子=ヒロインと表記します。

『Beer wo Nomihoshitai』の感想

生まれてはじめてのデートがどこだったか、覚えているだろうか?

私のはじめてのデートはauショップだった。

「えっ、どうしてはじめてのデートがauショップなの?」

そんな声が聞こえてくるが、当人にだってわからないことはある。わかりませんよ、はい。

当時の私は19歳だった。初デートを一緒した彼女は社会人を経て学生となった4つも年上の女性だった。経緯は忘れてしまったけれど(多分、携帯代が高いから少しでも安くしたいとかそんなの)彼女の使っていたポケットwi-fiを私も使うことになったのだった。ガラケーとライン用のsimなしスマホを併用することで、スマホ代を3,000円ほど下げることが出来た。学生にとっては嬉しい金額だ。

店員を前にどもる私をよそに、彼女は粛々と交渉を進めてくれていた。営業努力の賜物なのかもしれない。その節はどうもありがとうございました。

今にして思えば、「格安simを入れろよ」と言いたいところであるが、なんせ恋愛でべろべろに酔っぱらっている私だ。「すっげー!さすが社会人経験ある彼女すげーまじ神!!」ぐらいに思っていたのではないだろうか。思考の失せた愚物である。なにはともあれ、私の初デートはauショップだった。

一方で、『Beer wo Nomihoshitai』の主人公は生まれてはじめのデートに居酒屋を選んだ。しかも、そのデートのお相手はお酒が飲めない(と言っている)。

なんたる悪手、世の大人はみなそう思うだろう。それでも主人公はいう。

ぜんっぜん話盛り上げられなかったね…(中略)でも、俺は楽しかったよ。次はもっといろいろ話ができたらいいなあ。

ミヤオカジョブ『Beer wo Nomihoshitai』株式会社オンデマンドスクエア.2021.5

ヒロインの対応は素っ気ないものだが、それも当然だろう。両者の間ではコミュニケーションがなされているようでなされていないのだから。酒を飲めない人に酒の話をしたり、自分の好きなものを語ろうとするばかりで盛り上がりのかけた言葉を投げつけるだけではコミュニケーションが取れているとはいえない。端的にいって会話が下手なのだ。

だから、女の子は嘘電話(と思しき)をしながら颯爽とタクシーに乗っていく。タクシーのドア越しに「それじゃ!また!」と揚々に語る女の子の清々しさが気持ち良いくらいだ。

「まったく、君はなにをやっているんだい。もっと上手くやれよ」と読者の溜息が聞こえてくるようであるが、そういうあなたにもぜひ思い出してほしい、かつて初心だった自分のことを。

デートに誘ったことに満足してろくにプランも練らずに当日を迎えたことがなかったろうか。そういった日のデートは往々にして失敗する。その反省を活かし、プランを練りに練って計画しても会話下手な自分が一番の障害であったりコミュニケーションを取れていない自分に焦りを感じて一層ひどい失敗をするものではないだろうか……泣きなくってきたな。

コミュニケーションって難しいよね

その後、コミュニケーションについての指導を後輩にされたり(本当に聞いていたのかい?という反応を主人公はする。ここもある意味では没交渉だったのかも)泥酔した女性を介抱したりとしているうちに、主人公は窮地に追いやられる。

詳細はネタバレになるので割愛するが、この後の主人公とヒロインのやりとりがなかなか興味深い。主人公にとってもヒロインにとっても遭遇のしたくない事態であったことには違いない。

有り体に書くのであれば、主人公はヒロインのアイデンティティを形成するあることに接触する。そこに触れた主人公はヒロインからはじめて感情(=誤解なのですが)を引き出すことに成功するが、それは主人公の臨んだ形ではなかった。ヒロインからあからさまな嫌悪の情を向けられる。そして、その圧に主人公は耐えることが出来ない。

それが故に主人公も誤解を解くために自身の今のアイデンティティ(=恋愛感情。ヒロインに好意をひ寄せている、とあからさまに分かる形で告げる)を吐露する形になる。

そこで起こる、“個”と“個”のぶつかり合いがふたりの間に交流の場を発生させることになる。つまるところ「1枚皮をかぶった人と人の間にはコミュニケーションの生まれる余地はないよね」ということなのではないか。

まぁ、その後良い感じになったところで主人公は「まあでも、また飲みにでも行こ?」と性懲りもなく誘うのであるが……

その結果は、本編でご覧いただきたい。

まあ、いずれにしろ本音で語り合った結果であるのだからそれに納得するしかない。

……完全な余談ですが、冒頭で書いたauショップデートをした彼女には結局3か月程でフラれました。

理由?

私が自分の好きなことばかりを話していたからだと思っています、相手の話をロクに聞かずにですね。だからねぇ、この漫画の主人公に変なシンパシーを覚えるのですね。このまま付き合っても上手く行かないぞ、と。

まっ、本当のところは分かりませんけどね

おわりに

今回書いた感想を読み返してみると、私は無意識のうちに主人公目線で書いていたことに気づく。この話をヒロイン目線で考えてみるとどうだろう。

なぜヒロインは主人公の誘いに乗って飲みに来たのか?

ヒロインは本当にお酒が飲めないから「飲めない」と話したのか?

嘘電話の言い訳になぜ母親を使ったのか?

疑問は色々とあるが、私の先生が昔言っていた「良い小説には無駄な描写はない、だからこそ様々な視点から語ることが出来るのだ」という発言を参照すると、この漫画作品のひとつひとつの描写、コマにも意味があるように思える。著者は次作の発表を控えているらしい。

……本作『Beer wo Nomihoshitai』のあとがきによると、著者は新たな価値観を踏まえた上で次作を発表するらしいのですが、読者としてもそれがどう作品に影響を及ぼすのか、楽しみです。

と、この辺で本記事を締めたいと思います。

Miyaoka Job様、素敵な漫画作品をありがとうございました!

それでは、最後に私が本作にぴったりだなと思った詩があったので、ご紹介させていただきます。

『Beer Wo Nomihoshitai』を読んだ皆さん、これから手に取るだろう皆さんに読んでほしいです。

それでは、また

わたしたちはできない!

できないことはできない!

向いていないことはできない!

面白くない話に無理に話を合わせられない!

面白くない話は面白くないから!

自慢話に愛想笑いできない!

(中略)

「男を立てる」ことができない!

「三歩下がる」ことができない!

面倒くさいから!

馬鹿馬鹿しいから!

面倒くさいから!

(中略)

わたしたちは絶対にできない!

わたしたちは死んでもできない!

松田青子「We Can’t Do It!」『ワイルドフラワーの見えない一年』河出書房新社2016.8 ※初出『文藝』2015冬号

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